不思議な話 恐山のお地蔵さん

子どもの頃、母方の祖母から聞いた不思議な話がある。

今思い返してみると細かいところをもっと聞いてみたいのだけど、1993年に他界しているためそれも叶わず。
それは概ね下記のような内容。


まだ祖母が幼少だった頃、大病を患って生死を彷徨った。

夢の中で祖母は真っ暗なトンネルを歩いている。

遠くから自分の名前を呼ぶのが聞こえる。声を頼りに暗闇を歩いていき暫くすると細い川に出た。

そこには橋が架かっている。

橋を渡ろうとすると、対岸のたもとに鬼がいて、「ここはお前の来るところではない」と言う。怖くて引き返そうとすると、今渡ってきた、もう片方のたもとにも鬼がいて、やはり「ここはお前の来るところではない」と言う。やがて鬼に挟まれ、どちらにも逃げることが出来なくなった祖母は川に落ちてしまう。

どれくらい経っただろうか。光を感じて目が覚めた。すると目の前にはお地蔵さんが立っていた。

眩い光はお地蔵さんの後光だった。

程なくして祖母は意識を取り戻し一命をとりとめたそうだ。

祖母はお地蔵さんに命を助けられた、と感じた。

そして時は何十年も過ぎ、祖母は青森の恐山に訪れる機会があった。

そこで、なんとあの時祖母を助けてくれたお地蔵さんに再開したのだそうだ。

恐山には沢山のお地蔵さんがいるが、その中であの時のお地蔵さんだとすぐにわかったそうで、丁重にお礼をしたそうだ。


私はこの話を聞いて、子ども心に不思議で凄い話だと感じた。

祖母が話してくれたこのありがたい体験を私はずっと覚えていたが、特に意識していたわけではなかった。

時は流れ、私は音楽を仕事にするようになった。
かなりエネルギーを使う作品創りがひと段落したタイミングで急に思い立って、いつか訪れてみたいと思っていた恐山へ旅に出ることにした。
とにかく少し仕事から離れて自身を見つめ直したかった。

祖母が亡くなって15年経った2008年の夏の終わり。
そして祖母からこの話を聞いてから25年が経っていた。

祖母は霊感が強い人だったけど、何十年も経ってから無数にあるお地蔵さんの中からその時助けてくれたお地蔵さんを見つけ出すなんて可能なのだろうか?

祖母は亡くなるまで頭のしっかりとした人だった。ボケていたり、勘違いをしているとは考えにくい。

もしかしたらお地蔵さんが祖母に気付かせてくれたのかも知れない。

祖母の話を思い出したのも何かの縁で、もしかしたら私が恐山を訪れたら何か感じるかも知れない!と少し期待して…