留学シリーズ 第五話 「Berklee生活その2」 10/11/05


各授業は1Semesterごとに区切られており、中間と期末に作品や実演のプロジェクトがあり、教科によりそれに加えて中間・期末テストがある。Semesterが終わるとそれらの評価や毎回の宿題それに出席が加味されて成績がつけられる。例えばHarmony(和声や楽典・作曲といったもの)は4つのレベルに分かれていてSemester毎に1つのレベルをクリアしていくこととなる。そして基礎的な科目をクリアするとそれぞれにつながる専門分野の授業が取れる仕組みとなっている。また入学はアメリカで主流の秋だけでなく、春や夏のSemesterでもOkである。以上のことから学年という考えより何Semester目かというほうが各人の履修の進み方を知る目安となる。

全員が取らなくてはならない必須科目は前述のHarmony、Ear training(聴音やソルフェージュ)、Arranging(譜面の書き方や編曲)、Music Technology(音楽機材などの知識)、それに各人のPrincipal instrument(必ずなにか唄を含め楽器演奏が必須)による個人レッスン、アンサンブル(合奏)、Lab(楽器演奏や初見のスキルアップ)などがある。その後各専門分野ごとの授業へと移行してゆく。よって最初の4Semesterくらいは専攻が何であれ皆同じような授業を取る事となる。

私は最初Contemporary Writing & Production(ポピュラー音楽の作編曲とスタジオワークス)の専攻だったがスタジオワークスなどは実践で理解していたので、書き物を集中して勉強した後Professional Musicという自分である程度ゴールを決めることが出来る専攻に変更し卒業した。

書き物系は作編曲系授業のほかConducting(指揮法)やBasic Keyboard(基礎キーボード)、Music Perparation(譜面の書き方から全体譜・パート譜の作成)、Tech Tools(シーケンサーなどDTM系)が必修であった(この辺はよく変更になるので詳細はBerkleeにて確認のこと)。

ちなみに卒業の種類にはDegreeとDiplomaの2種類あり、前者は音楽以外の一般教養も履修し大学卒業の資格とみなされる。後者は音楽のみの「専科卒業」といったところか。高校卒業してすぐの生徒は前者、他の大学卒業後入学の生徒は後者が多いようである。

最初から全て始めなくてはならないわけではなく、入学時のテストでレベル分けされて今の自分のレヴェルに見合った授業から始められることに加え、各Semester始めにテストを受けて単位を取ることも出来る。事前に教科書を見たり先輩の話を聞いて「この授業は受けなくても大丈夫」とか「早く専門の勉強をしたい」と思えば積極的にこの制度を使うことをお勧めする。お金と時間の節約にもつながる。

また他の音楽大学や提携校で取得した単位は申請により履修免除になる制度もあるので是非活用したいところである。 Degreeの生徒が必須とされる一般教養などもその対象となるので、学校が休みとなる夏の間に他の大学(Berkleeよりも学費が安いところ)でまとめて取ってしまう生徒も多い。また近隣の芸術系大学の授業を取ることも可能であるはずだ(私は取らなかったので定かではないが)。

また秋と春に決められた単位数をとっていれば夏のSemesterは取らなくても良いが、わずかな単位でも履修可能であるのでフルで取るのも良いが先を急ぐ科目だけ取ってしまうこともできる。ただし先生は夏休みをとっていることが多いので、選り好みはできない。

全て1から始めたとして1年に秋と春の2Semesterずつ(日本では前期・後期くらいの時間配分)の履修で卒業までに4年かかる。最短ではどのくらいかわからないが私の場合は前述のアイデアたちを使い計6Semester、2年4ヶ月でDiplomaにて卒業した(卒業必要単位以上取ったので、実質2年で卒業できた計算となる)。

私のBerkleeの思い出といえばとにかく日々の授業と各授業から出される宿題、また練習の毎日であった。アレンジ系の授業が多いときはプロジェクト提出前は家にこもってひたすら譜面を書いていた覚えがある。社会人の頃夢にまで見た音楽漬けの生活…。大変であまり遊ぶ余裕もなかったが望んだものであったし、今振り返っても良い思い出である。

ある金曜日の授業後、家で一息ついていたときのことである。急に頭が重くなって首が回らなくなってしまった。その痛みといったら寝返りが打てないほどである。そのようなときに限って夜中に学校のスタジオで友人のレコーディングでベース弾きを頼まれていたので、楽器を背負っての学校までの道のり、当時は校舎と校舎の間に住んでいて普段は1分くらいの距離を10分くらいかけていったのを覚えている。またレコーディング中は首が回らないためドラマーなど周囲のミュージシャンやエンジニアとのアイコンタクトが取れなくて不自由をした…(結局医者には行かず、4日くらいで完治した)。勉強のしすぎか?

 

 

つづく

 

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