留学シリーズ 第一話 「はじめに」


私は普段文章などほとんど書かない。ただ文章にしないと「忘れる」ことが多い。私が帰国したのが半年前。そろそろ記憶が怪しくなってくる頃である。この辺で自分の留学経験を整理しておけば誰かの役にも立つかも知れない、など希望を心の片隅に持ちつつ、思いつきに任せて書いてみることにする。ただし「留学マニュアル」を作る気もないので、あくまでも一留学経験者の思い出話としてお聞きいただければと思う。

私が留学したのはアメリカ東海岸の街、BostonにあるBerklee College Of Musicである。入学したのは2000年9月。BerkleeといえばJazzの学校として世界的に名高く、私の尊敬するProducer, Quincy JonesやDonald Fagen、日本人では渡辺貞夫氏など音楽界の重鎮を輩出している学校である。

私が留学した理由としては、音楽の勉強がしたいというよりも、一生に一度他の国で生活してみたいということだった。以前から同じ思いは持ってはいたが、30歳を目前にして、やるなら若いうち、そう、今しかない!と強く思ったことだった。なにせ初めて海外に行ったのが留学する年の9ヶ月前、すなわち1999年末のNew York旅行だったのだから。

留学する前の7月に南部の友人宅に英語の勉強を兼ねて3週間ほどお世話になったついでに、Bostonに立ち寄り家探しをした。知らない土地で一人家探し、この時がアメリカ生活で一番緊張したかもしれない。以前Berkleeに行っていた友人から教えてもらった不動産屋を探しあて、なんとかこちらの条件を伝え物件を紹介してもらった。留学生の多い地域なので、こちらが大して英語をしゃべれなくても邪険にせず対応してくれたのが救いだった。ただその人の英語の速いこと(この人はアメリカ人の中でも早口)! 最近は日本からでもInternetで日本人学生のRoom Mate募集などの情報が手に入るようなので、とりあえず住むところが心配という方には便利かもしれない。

不動産探しで必要なのは、相場を知ることである。Bostonは首都圏が広がっている東京とは違い、便利なエリア(地下鉄の便がある)がとても限られているので、とてもとても高い!おまけに町並み保存の為数十年以上経ったアパートがほとんど。外観は良いが、中身は日本のそれと比べると汚くて欠陥が多い。私が在学していた時期でStudio(ワンルームタイプ)が$1,000前後、2 Bed roomだと$1,400前後だった。東京の港区より高いのでは?

アメリカで生活や勉強する上で重要なのはもちろん英語である。私は日本の大学で英米文学を専攻していたし、英語圏の友人もいたのでまったく話せないわけではなかったが、自分の期待と裏腹に耳は慣れるのに意外と時間がかかるものであると実感した。日常生活では不自由を感じないのと、英語がわからなくても授業内容は音楽のことなので大体わかってしまうのが落とし穴である。おまけに日本人留学生は全体(3,000人)の約10%、300人もいるので、意識して他の国の生徒たちと積極的に付き合わないと何時までたっても英語が身についていかない。留学の機会を最大限に生かすために、事前にできれば英会話をなるべく多く実践しておくことを勧める。そして留学中は音楽以外の付き合いの場所、たとえばクラブ活動や学校内でのバイトなどをすると良いだろう。

 

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